骨折は「骨が折れる」と書きます。だから箸がポキッと折れるようなのをイメージしますが、実はさまざまな折れ方があります。骨がつぶれるのも、ゆがむのも、曲がるのもみんな骨折といいます
「骨」といって思い浮かぶのは長い棒のような形で、こういう骨を長骨とか長管骨といいます。体には長骨以外にもいろんな形の骨があります。例えば腰の骨や踵の骨はブロックのような形。腰にはこのブロックの骨がいくつも積み重なっていて、力が加わると「折れる」のではなく、豆腐を押さえつけた時のようにぐしゃっとつぶれます。これを脊椎圧迫骨折と言います。
では圧迫骨折はどんな時に起こるのでしょうか。高いところから落ちて強い衝撃がからだに加わってつぶれてしまうのは当然。ところが高いところから落ちなくても、家の中で軽く尻もちをついたり、布団を持ち上げただけでつぶれてしまうことがあります。このように簡単に圧迫骨折を起こす人は骨粗しょう症になっています。骨粗しょう症になると本人が知らないうちに少しずつ骨がつぶれていってしまいます。すると背中が丸くなってきたり、若いころより身長が低くなってきたりします。
もろい骨が急につぶれると激しい痛みがでます。漬物石を持ち上げて腰に痛みを感じ、ギックリ腰だと思っていたのに日に日に痛みが強くなってきた、という患者さんが初冬になると何人も受診します。検査をするとほとんどが骨粗しょう症による圧迫骨折。圧迫骨折は適切な治療を施すと、数週間で痛みがとれます。痛みがとれると治療をやめてしまう人がいますが、実は痛みが取れた後の骨粗しょう症の治療がもっとも大事。なぜなら一度圧迫骨折を起こした人はその後も骨折を起こすことが多く、そういう骨折を二次性骨折とか連鎖骨折といいます。骨折を繰り返すことは寝たきりの原因になりますので、骨粗しょう症を治療して圧迫骨折を予防することがとても大切です。
MGプレス 動いて健やかに63
2025年1月14日掲載