今回は五十肩や寝違(ねちが)えと似た病気のお話。急に首から肩に激しい痛みを感じるようになった70代の患者さんが受診しました。首は動かせないし肩も挙げられません。まさに五十肩や寝違えのようですが別の病気でした。この患者さんの病名は「リウマチ性多発筋痛症(たはつきんつうしょう)」。
病名に「リウマチ」が入っていますがリウマチとはちょっと違います。
リウマチは関節が痛みますが、リウマチ性多発筋痛症は筋肉が痛くなります。この病気はリウマチより患者さんの年齢が高く、70代以上の高齢者に多いのが特徴。女性に多く両肩の痛み以外に、腰やふとももが痛むこともあります。さらに全身倦怠感や発熱、意欲低下や食欲低下、体重減少などの症状が起こることも。
肩こりや、寝違え、首の神経痛、五十肩は血液検査で異常がありません。ところがリウマチ性多発筋痛症は炎症反応がとても高くなります。リウマチの時に陽性になるリウマチ因子は検出されません。
リウマチは治療に時間がかかり、昔は慢性関節リウマチといわれていました。しかしリウマチ性多発筋痛症は急に症状が出て痛みも強いのですが、適切な治療を受ければ短期間によくなります。この患者さんもお薬を飲み始めて2週間で痛みはほとんどなくなりました。ただ炎症がおさまってもすぐに薬をやめると再発することが多いので、徐々にお薬を減らしていきます。
リウマチ性多発筋痛症は決して珍しい病気ではなく、女性では40人にひとりが1回はかかるといわれています。だから肩こりや五十肩だと思っていたら、リウマチ性多発筋痛症だったという患者さんはけっこういるのです。また、この病気はこめかみにある動脈が炎症を起こす側頭動脈炎という病気を合併することがあり、頭痛や視力低下をきたします。
肩の痛みが急に出てきたら、五十肩と自己判断せず整形外科やリウマチ専門医を受診してみてください。
MGプレス 動いて健やかに61
2024年11月26日掲載